【お墓と本】墓マイラーのバイブル!? 個性豊かなガイドブック紹介

歴史上の有名人・偉人のお墓参りをする人のことを「墓マイラー」と言います。歴史的墓所や墓碑は、観光スポットになっていたり、都立霊園などでは墓所マップが作られていたりと、多くのお墓がオープンになっているのです。

お墓参りの理由や思いは人それぞれでしょう。ただ、その墓前へ行って、感じること、体験できることに意味や価値があるに違いありません。わたしの場合、お墓に興味を持って、その意味を考えるようになると、有名・著名な先人たちがどのようなお墓をのこし、眠っているのか気になるようになりました。

そこで、わたし自身が読んでためになった本の中から、「墓マイラー」活動をするなら参考にしたい、おすすめガイドブックをご紹介します。

こんな記事

『文豪お墓まいり記』

文豪たちに会いに行く、お墓参りエッセイ

文豪お墓まいり記』は、「現代の作家が、過去の作家に会いに行くーー」そんなコンセプトで綴られた、山崎ナオコーラさんのエッセイ集です。文芸雑誌「文學界」に2015年3月号〜2017年3月、8月号の連載が2019年2月に単行本として発売され、さらに2021年に文庫化となっています。

文藝春秋BOOKSさんの書籍紹介ページで、一部立ち読みができるのでまずはぜひ読んでみてください。

はじめに〜中島敦(多摩霊園)|立ち読み(文藝春秋BOOKS)

26人の文豪たち:中島敦、永井荷風、織田作之助、澁澤龍彦、金子光晴、谷崎潤一郎、太宰治、色川武大、三好十郎、幸田文、歌川国芳、武田百合子、堀辰雄、星新一、幸田露伴、遠藤周作、夏目漱石、林芙美子、獅子文六、国木田独歩、森茉莉、有吉佐和子、芥川龍之介、内田百閒、高見順、深沢七郎。

目次をチェックすると、訪れた全26人の文豪たち(とそのお墓の在処)一覧が出ています。超メジャー級の文豪も、教科書で目にしたあの作家も、ハマって読んだあの著者も……どなたにも身近なお名前ばかりではないでしょうか。

山崎ナオコーラさんにとっての各文豪エピソードが、実際に訪れたお墓まいり記と交錯するような文章には、思いを馳せる手がかりが多くあるので、その作家への興味がむくむくと湧いてきます。

連載していらっしゃった頃はきっと月に一度は文豪参りをする生活をされていた山崎さん……羨ましい! なんて思ったけれど、じつは掲載のほとんどのお墓が東京都内にあり(あとは北鎌倉と秩父、大阪、京都に1基ずつ)、決して難しいものではないことに気付かされました。

『文豪お墓まいり記』を読後、実際にわたしもいくつかのを訪ねることになりましたし、意外にお手軽に文豪にリンクできるのだと知ったのでした。

夏目漱石の墓(雑司ヶ谷霊園)
国木田独歩の墓
国木田独歩の墓(青山霊園)

『日本文学(墓)全集 時どきスイーツ』

ぶんか社より

墓マイラー初心者に「お墓参り×日本文学×スイーツ」

月刊誌「本当にあった(生)ここだけの話」(芳文社・現在は休刊)にて、2013年から「参るよ!墓近スイーツ」というタイトルで連載されていた安堂友子さんによるコミックエッセイ。2015年に単行本化され、『日本文学(墓)全集 時どきスイーツ』となりました。

12ヶ所14名の文豪たちのお墓巡りと、彼らの知られざるエピソード、ついでに墓所近くで訪ねられるスイーツの名店の紹介まで、ライトで笑っちゃうテイストで描かれています。墓所近隣の名店スイーツの紹介には、その手があったか! と。

漫画の可愛さも去ることながら、「墓マイラー」初心者の著者さんと編集者さんがお墓参りする様子や素直な感想など、なんと親しみやすいことでしょう。

太宰治、夏目漱石、芥川龍之介などメジャーな文豪たちのお墓はほぼ都内(川端康成だけ鎌倉)ですし、お墓参りとわたしたちの日常(美味しいもの)との距離を近づけてくれて、初めての墓マイラー活動にはうってつけの一冊です。電子書籍で気軽に読むことができます。

紙の書籍は「おはかんりの書棚」にも置いています。

『作家の墓を訪ねよう―明治の文豪から現代作家まで148人の墓碑案内』

斬新な編集方針と資料的価値に脱帽

作家の墓を訪ねよう』は1996年発行ながら、ぜひご紹介したい本です。著者・岩井寛さんは、日本全国一千基を越える文学者の墓碑を探訪してきたといい、そのうち148人もの墓碑が収録されています。

注目すべきはその収録・掲載の方法。作家の「忌日」が見出しとなり、1月から12月まで日付順に並んでいるのです。

各ページは作家名、生年と没年、文章冒頭に略歴と死因、どこで亡くなったか、享年と戒名などがわかる範囲でまとめられ、ています。さらに、晩年の著作や近親者の回想などを拾い集めその人物像に迫る文章は、代表作の紹介で締め括られます。

見開きの左側には、墓碑の写真とその場所、交通案内、墓石の特徴などが簡潔にまとめられているのも統一フォーマット。モノクロではありますがすべて墓碑の写真が揃っていること、行ってきたからこそ分かる的確な説明書きが記されていることが強みでしょう。

実際に、初めて訪れる墓所を探すとき、写真があるってかなり重要な手がかりになりますし、撮影当時の状態が記録されているのもいまや貴重と言えるのではないでしょうか。

お墓の特性上不変の事実とデータで出来ているため、25年以上前の出版といってもまったく古く感じられませんし、むしろお墓から遡って死因と晩年に迫る斬新さが、差別化される点だと思います。見つけたら手に入れておくべき一冊です。

こうして並ぶといかに短命の作家が多かったか、ということにも気付かされ、ときどきでページをめくり、忌日に作家たちを悼むとともに、のこされた文学にも触れてみたいと思うのです。

『江戸東京 名士の墓碑めぐり』

地図から江戸東京たる由縁を知る、永久保存版

2002年に出版された『江戸東京 名士の墓碑めぐり』は「江戸開府400年記念保存版」というだけあって、A4版オールカラーに情報満載のお墓巡りガイドブックです。

江戸東京を中心に据えており、まずは六大霊園コースとして、谷中・染井・雑司ヶ谷・青山・小平・多摩の都立六霊園からそれぞれ名士の墓をがっつり特集。さらにお散歩12コース、地域別お墓めぐりとして東京をエリア分けしながら、歩きながら巡れるお墓をできる限り掲載していこうというコンセプトのようです。

500人を超える名士たちは、ジャンルごと「美術・音楽・芸能など」「文筆家」「学習・教育者」「大名・幕臣・志士ほか」「政治家・軍人・実業家ほか」「罪人・侠客など」「その他」に大別され、探せるようになっています。

各人の情報は最低限でコンパクトながら、すべてのお墓が地図上に記載されているのがポイントでしょう。20年前の情報ではありますが、改葬しない限りは存在し続けるのがお墓ですから、墓所の特定にはおおいに役に立つでしょう。一般向け非公開や墓参に制約がある墓所は色分けされていて、目的に叶うかどうかも知ることができます。

一部は江戸の古地図が載っているページもあって地図好きの人にはもちろん、お墓と歴史散歩のお供に、永久保存版にしたいビジュアルブックです。

『東京 有名人のお墓さんぽ―訪ねてみたい有名人三百余名の掃苔録』

東京のお墓情報をコンパクトに凝縮

東京 有名人のお墓さんぽ』は、上の『江戸東京 名士の墓碑めぐり』から同人文社さんが「ものしりミニシリーズ」として編纂し直したハンディ版です。

有名人の収録人数は300人余りと多少減ったものの、コンパクトなA5判サイズの割には濃密・十分なお墓情報が掲載されていると言えます。マップは減ったものの、都立六大霊園については園内墓所地図も掲載されていて助かります。

東京のお墓さんぽのモデルコースとしては下記の厳選3コースが、詳細な解説とルート地図付きで紹介されています。

  • その① 台東区・西浅草周辺「榧寺から浅草寺へ」
  • その② 新宿区・須賀町周辺「西念寺から成覚寺へ」
  • その③ 港区・高輪周辺「立行事から長松寺へ」

お墓参りとともに由緒あるお寺巡りが楽しめそうで、読んでるだけでバーチャル散歩もできちゃいます。

さて、先の『江戸東京 名士の墓碑めぐり』と『東京 有名人のお墓さんぽ』の出版元である人文社さんは現在廃業されてしまったようなのですが、墓マイラー的価値の高さを直感して複数冊手に入れて、シェア型書店「猫の本棚」の『おはかんりの書棚』にラインナップしています。

『東京・鎌倉有名人お墓お散歩ブック』

大和書房より

元祖“墓マイラー”のエッセンスを凝縮

東京・鎌倉有名人お墓お散歩ブック』は、東京・鎌倉に眠る104名の有名人のお墓を掲載するガイドブックです。

観光ガイドブックとしてエリアごとのコース提案、実用的な都立六大霊園の墓所マップ、お墓の近くの「見る、食べる、買う」スポット情報などもありがたいのですが、特筆すべきはやはりお墓情報。お墓解説と人物紹介が的確、かつ熱いんです。

それもそのはず、編者は墓マイラーの第一人者カジポン・マルコ・残月さん。テレビ大阪「お墓から見たニッポン」シリーズへのご出演でもお馴染み、「墓マイラー」という言葉の生みの親でもあります。

東京・鎌倉に眠る104名の有名人のお墓を掲載。偉人たちへの敬意と感謝があふれるカジポンさんの文章は、ご自身が撮られたであろう写真とともに、読む人にも迫って温かい気持ちになります。

さらに、なんと夏目漱石、谷崎潤一郎、太宰治の血を引く親族の方が特別エッセイを寄稿され、お墓への想いを綴られているのも希少です。

2005年発行で古くはあるのですが、そこは毎度のお墓パワー。お墓に関しては年月をもろともしないどころか、むしろ今同じことをしようと思っても難しいかもしれません。見つけたら手に入れておきたい、墓マイラーのバイブル本でしょう。

墓マイラー活動にガイドブックは必須

お墓参りをするにあたって、欠かせないのが「情報」です。いまやネットで検索をすれば、なんでも調べられてしまう時代ですが、テーマをもって集められ、紙の「本」の形をとって信頼できる、断片的ではなく網羅的な情報は、やはり格別です。著者や編者の思いや意図を知ることができると、勝手ながらお仲間になったような感覚にもなります。

墓マイラー本に関しては、古い出版年の本がむしろ、情報価値が高いことが見えてきました。個人情報に厳しい昨今は、新たに建てられたお墓の故人情報は、なかなか出版しづらい時代でしょう。

ガイドブックに掲載されている偉人や文豪たちは、そうした煩わしさを超越した存在といえるかもしれません。実際にそこにあるお墓を通じて、後世のわれわれとつながる手段となってくれるお墓の意味を、あらためて考えさせられます。

そして、このようなガイドブックをいくつも手にしたおかげで、一人でも墓マイラー活動ができるようになってきました。

上記は一度に6つのお墓を訪ねてしまったのですが、盛りだくさんすぎましたね…。今度は事前の情報収集もしっかりした上で、余裕を持って、あるいは効率よく、テーマを決めて訪ねたいと思っております。墓マイラー沼…ハマるかもしれません。

学ぶことばかりの個性豊かなガイドブック、まずは6冊まとめましたが、気になる本もまだまだあるんですね。これから手に入れ次第、ご紹介できたらと思います。

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