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【散骨】自然葬、海洋散骨…「散骨に関するガイドライン」でなにが変わる?

お墓を持つ以外に、散骨という葬送方法があります。ただ、実際どのように行えばよいのか分からない人も多いのではないでしょうか。2021年に厚生労働省から発せられた「散骨に関するガイドライン」をもとに、現状を整理してみました。

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散骨とは

お墓を管理できることを目指す「おはかんり」ではありますが、「散骨」はお墓に入らない選択肢のひとつとして、ありだと思っています。

先月、海洋散骨の体験クルーズに参加して、実際の散骨がどのように行われているのかを理解することもできました。

2012年公開の映画『あなたへ』では、奥さんの遺言を受けた男(高倉健さん)が、長崎の海で散骨する姿を描いていました。

自分で船をチャーターし、骨壷のお骨を自分で粉骨するといういわばDIY方式の、物語の中の散骨ではありましたが、多くの人がこうした弔い方があるのか、と知る機会にはなったかもしれませんね。

では現実の「散骨」について、すこし詳しく見ておきましょう。

自然葬としての散骨

「散骨」というと、海や山、川などへ遺灰を撒いて、自然に還るといったイメージから「自然葬」という括りで考えられることが多いのではないでしょうか。

「自然葬」という言葉は、NPO法人「葬送の自由をすすめる会」によって、1991年2月に初めて使われたそうです。

自然葬(しぜんそう)とは、墓でなく海や山などに遺灰を還すことにより、自然の大きな循環の中に回帰していこうとする葬送の方法の総称である。狭義にとらえると散骨と同義であり、広義にとらえると風葬、鳥葬、水葬、火葬、土葬、植樹葬、冷凍葬など自然に回帰するような葬り方全般を指すというとらえ方もある。

NPO法人 葬送の自由をすすめる会「自然葬について」より

作家の椎名誠さんも自然葬を希望するお一人です。少なからず考えさせられた本を紹介しています。

ただ、日本の「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」には、「自然葬」や「散骨」に関する取り決めがないことから、なかなか一般化せず、実態も見えづらいところがありました。

1991年に法務省が「葬送の為の祭祀で、節度をもって行われる限り違法ではない」との見解を示してはいるものの、各自治体が条例レベルで定めたルールの範囲内や、社会的秩序を鑑みて「節度をもって」行われてきたようです。

ただ、これは個人の価値観によるところが多く、各自治体のルールがあっても積極的に公にはされていないようです。「法的にグレーなのでは?」と見る人もいるでしょう。

散骨に関するガイドライン

そこへ2021年3月30日付で、厚生労働省からついに「散骨に関するガイドライン」が取りまとめられました。

「近年、葬送の在り方に関する国民の意識の変化に伴い、新たな葬送として散骨が広がりつつあるところ、このような状況を踏まえ」てのことだそうです。

散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)(PDF)|厚生労働省

以下、この書面の内容からみていきましょう。

まず「散骨」の定義です。
「墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為」

と、まあまあお堅いですが……墓埋法に定められた以外の遺骨(焼骨)の行き場が「散骨」ということになるでしょうか。

そして以下のような項目のガイドラインが示されています。

  1. 法令等の遵守
  2. 散骨を行う場所(陸上の場合、海洋の場合)
  3. 焼骨の形状(粉状に砕くこと)
  4. 関係者への配慮地域住民、周辺の土地所有者、漁業者等の関係者の利益、宗教感情等)
  5. 自然環境への配慮
  6. 利用者との契約等(約款の整備、契約、散骨証明書の作成等)
  7. 安全の確保
  8. 散骨の実施状況の公表

個人的な感想として、これまで事業者の自主ルールや関係者の自助努力によって行われてきた散骨を、まとめて明文化したような印象になっていました。あくまで散骨事業者向けとされていますから、そこから実態をヒアリングした結果のようでもあります。

すなわち一般向けとしては、先日参加した「散骨体験クルーズ」のブルーオーシャンセレモニーさんも所属する、一般社団法人日本海洋散骨協会の「日本海洋散骨協会ガイドライン」(2021年08月01日改定)がしっかりと示されていて、参考になります。

散骨の実施状況の公表へ?

そんななか、8つめに示された「散骨の実施状況の公表」については、目新しいかもしれません。

散骨事業者は、自らの散骨の実施状況(散骨の件数、散骨の場所等)を年度ごとに取りまとめ、自社のホームページ等で公表すること。」とあります。これは、散骨関係団体についても求められており、さらに「地方公共団体の求めがあれば提出すること。」と付言されています。

散骨事業者・関係団体がガイドラインに則れば、おそらく2021年度分からは取扱件数などを正式に公表する必要が出てくるため、件数や散骨場所などの実態が具体的に把握できるようになるのではないか、と期待しています。これまで、わたしたちが日本国内の散骨件数を正しく知ることは困難だったからです。

このように、昨年初めてガイドラインが示されたことによって、もし散骨事業者と行政とが積極的に連携できるようになれば、散骨の実態が明らかになりますし、安心感という意味においても、大きく前進するように思われます。

対応する自治体は?

このガイドラインの懸念点は、まだ「散骨事業者向け」に留まっている点で一般向けではないこと、また法的拘束力がないことでしょうか。

たとえば東京都福祉保健局は、「散骨に関する留意事項」のなかで「法による手続きはありませんが、念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします。」としており、やはり自治体任せになっています。

散骨に関する留意事項 東京都福祉保健局

散骨場所の市区町村レベルで異なる対応になるわけですが、対応はさまざまです。

たとえば、静岡県熱海市は平成27年7月にガイドラインを策定、公表しています。

法的規範がないなかで、観光都市として風評被害を防ぐため、また漁業や観光産業の関係者とのトラブルの防止、公共の福祉に支障を生じさせないことなどが目的とされていますね。事業者向けであることを前提に、任せられた課題に苦慮している様子も見えないではありません。

一方で、島根県隠岐郡海士町には、2008年より無人島であるカズラ島に、自然葬ができる散骨場所が設けられています。民間業者が運営しているものですが、町の認可のもとに独自の取り組みがあるのは、注目に値しますね。

地域それぞれの事情のもと、自治体ごとの対応が必要であり、一律にいかない性質というのもよく分かるので、難しい問題ですね。

まとめ

今回は、厚生労働省による散骨事業者向け「散骨に関するガイドライン」から、国内の散骨まわりで起こりそうな可能性について考えてみました。

現状では、法的にグレーだった散骨は限りなく白に近くなってはいるもの、地域や事業者をしっかりと選ぶことが個人ができることでしょう。

近頃は散骨のニーズが増えているという意識調査や、散骨事業者の増加、広告宣伝の動きも顕著だと感じていますが、雰囲気だけではなくデータの信憑性もしっかりと見ておきたいですね。

対応する事業者にも注目しつつ、また海洋散骨だけでなく山へ散骨する自然葬についても情報を集め、また動きがあれば、追っていきたいと思います。

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