「お墓ってなんだろう?」と考えるとき、モノや場所、機能としてある物理的なお墓と、その意味や役割を心理的にどう捉えるか、両面がありますよね。これがごっちゃになると、うまく理解することができないように思います。
日本に暮らす以上は、日本の文化・慣習を知る必要もありますが、それも学校では取り立てて習った覚えはありません。教わったことといえば、地図記号とか、歴史上の古墳とか、海外におけるピラミッド…あたりがお墓に関することだったでしょうか。(私の記憶にないだけかも……!?)
「お墓」を知る上で、おさえておきたい前提をまとめてみました。

そもそも「お墓」を正しく理解できているかしら?
言葉の定義
「お墓」の意味を知るためにまず、言葉による定義からみてみましょう。
調べるときは「墓」になりますね。
お墓の「お」や、ご供養の「ご」は、丁寧語であるところの接頭辞で、なかでも美化語にあたります。
はか【墓】
広辞苑 第七版
①死者の遺骸や遺骨を葬ったところ。つか。おくつき。墳墓。
②墓碑(ぼひ)。墓石。
はか【墓】
明鏡国語辞典
遺骨や遺体を葬ってある所。また、その上に立てた石塔などの墓碑(ぼひ)。
「一墓(いっき)・・・」と数える。
おおまかに言って「墳墓」と「墓碑・墓石」とふたつの意味がありそうですね。
では、それぞれについて。
ふんぼ【墳墓】
広辞苑 第七版
(「墳」は盛土のある墓所、「墓」は盛土のない墓所)
①人を葬るはか。
②[史記(留候世家)「其親戚を離れ、墳墓を棄て、故旧を去る」]祖先代々の墓。また、その墓のある土地。故郷。⇨墳墓の地
「墳墓之地(ふんぼのち)」は「先祖代々の墓のある所=故郷」を意味する四字熟語にもなっています。墓と故郷や先祖との結びつきは昔から強いのですね。
ぼひ【墓碑】
広辞苑 第七版
死者の氏名・戒名・没年月日・事績などを彫りこんで、墓標として立てる石。はかいし。
人を葬る場所としての「墳墓」とその上に立てる「墓石」の両方がセットになっているのが「お墓」です。私たちが日頃つかっている意味や概念と、ほぼ一致しているのではないでしょうか。
法律上のお墓とは
日本の法律上の解釈は「墓地、埋葬等に関する法律」(通称「墓埋法」)の規定からみてみます。
戦後まもなくの昭和23年に制定された法律で、「埋葬」や「墓地、納骨堂」などについて定められているため、これが法的に「お墓」を規定するものです。言葉の定義には以下のようなものがあります。
- 「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む)を土中に葬ることをいう。
- 「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。
- 「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
- 「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。
- 「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。
- 「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
これらの言葉が、「お墓」に関連して知っておくべき事がらであり、切っても切り離せないものだともいえそうです。
お墓の地図記号
せっかくなので学校で習った地図記号もおさらいしておきましょう。

地図記号:墓地(ぼち)
墓地の記号は、亡くなった人を葬った墓をあらわします。墓地の広さが、75メートル×75メートル以上のものは特定地区界で囲み、記号を一定の間隔で表示します。
良い目標となる1基または数基の墓のある墓地は、墓の位置に記号を表示します。この記号は、墓を横から見た形を記号にしました。
国土交通省:国土地理院
地図記号が1つのときは、小さめの墓地。75×75メートル以上ある場合に、点線で示されていることがわかりました。
紙の地図を見る機会は少なくなりましたが、Googleマップでも墓地や霊園、納骨堂にこの記号を採用してアイコン表示しているので、覚えておくとよいですね。
墓地と埋葬、火葬の数
ではこの記号で示されるような墓地は、日本全国に何箇所くらいあるのでしょうか。
墓埋法によれば、墓地や納骨堂は都道府県知事の許可を得なければいけないので、その数を国は把握しています。ちなみに「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない」ため、それをすると犯罪(死体遺棄など)になる訳ですね。
最新の平成30(2018)年度、厚生労働省の統計資料「衛生行政報告例」によれば、日本全国の墓地は867,732箇所、納骨堂は12,889箇所となっています。
「墓地、埋葬等に関する法律に係る行政の仕組み」を参考に、平成30年度の一部データを当てはめてみました。

火葬を経て、納骨堂に納めることを「収蔵」、墓地に納めることを「埋蔵」とされていますが、その内訳数までは確認できませんでした。火葬の後に、その焼骨(遺骨)を散骨した場合や、埋葬せずに自宅などで保管されるケースもあるため、火葬数との差異がどのくらいなのかは気になるところです。(今後、各自治体ごとの埋葬許可発行状況等で追えるものがあるかもしれませ。)
「改葬」の数は、124,346件となっていて、いわゆるお墓のお引っ越しであると考えられます。また悲しいですが、死胎(妊娠四箇月以上の胎児)は19,875、うち705件が埋葬という状況もあるようです。(上記図には含めていません)
日本の火葬率はほぼ99.99%であることも分かりました。
「火葬」に対する「埋葬」は、土中に葬る土葬のことで、ごく少数です。都道府県別では、山形20件、神奈川18件、宮崎、東京が各11件(平成30年)となっており、地域の風習や宗教的なものが関係しているのかもしれません。
世界的に見ると土葬の割合も高いようなので、日本は火葬技術の発展とともに極めて独自に火葬・埋蔵文化を培ってきたようで興味深いです。
墓地、納骨堂の数に関連して、さまざまなことがわかってきました。細かいデータの推移を追うことでさらに、日本の特徴や地域別の傾向がつかめそうです。
まとめ
「お墓」と呼んでいるものが、客観的な尺度、主に法律ではどういったものか、お分かりいただけたでしょうか。
日本では届出認可制度で「墓地」がつくられているため、故人が埋葬、あるいはその遺骨が埋蔵・収蔵される場合、その場所が「お墓」という解釈ができるでしょう。
大きな括りを理解したところで、お墓にはまだまだ種類がありそうですよね?
経営・運営母体による墓地の種類、使用権や供養の方法による呼び方の違い、墓石や墓碑の種類・形などによる分類……。
ぜんぶ「お墓」のことだからややこしい。
それらはまた観点を明らかにしながら、調べてみて、紐解いていきますね。

まずは基本のき、でした。