東京都港区の一等地に囲まれた都立青山霊園(あおやまれいえん)は、都立霊園の中でもっとも人気があり、その使用料も高い都立霊園として有名です。例年の使用者募集では13倍以上の抽選倍率となるほどです。 今回はあらためて青山霊園の基本情報と、その魅力に迫ります。
シティ派の魅力溢れる霊園には、あの有名犬のお墓も。
都立青山霊園とは
青山霊園の所在・概要
青山霊園は、明治7(1874)年9月1日に東京府が開設した、最初期からある都立霊園のひとつです。
敷地面積は263,564㎡(約7万9千坪)もあり、都区内4霊園(雑司ヶ谷、青山、谷中、染井)でもっとも広大です。この一帯は、江戸時代、美濃(岐阜県)郡上藩主・青山家の下屋敷があり、この土地は徳川家康から直接に与えられたといいます。
現在はその面積の約半分が墓所となっており、緑比率は59%もあるそうです。樹木が生い茂るオアシスでありながら、明治以来日本の重要人物の墓所がひしめき合う、まさに都会の異空間と言えるでしょう。
都立霊園の公式サイト(TOKYO霊園さんぽ)から詳しい情報やマップを入手できます。
青山霊園のアクセス
青山霊園は、3つの地下鉄駅からアクセス可能です。
- 東京メトロ銀座線「外苑前」徒歩7~8分
- 千代田線「乃木坂」徒歩10~12分
- 都営大江戸線と東京メトロ銀座線・半蔵門線の「青山一丁目」徒歩9~10分
管理事務所に近いのは、青山通り(国道246号)方面から入る「外苑前」「青山一丁目」ルートです。
園内中央を走る公道は桜並木になっており、お花見スポットとしても有名ですが、緑の季節も美しい一本道です。起伏もなく走りやすいため、自転車で走り抜ける人も多く見かけます。
青山通り方面、西麻布方面のそれぞれから一方通行となっていて、中央付近の都道と交わる交差点で合流します。歴史を遡ると、昭和15年の都市計画として東西をつなぐ必要があったため、道路の敷設には墓所の移転が伴ったそう。現在は乃木坂トンネルから表参道方面への抜け道として、なくてはならない生活道路になっているようです。
駐車場は管理事務所の向かいに墓参者専用駐車場(1時間以内)があるほか、園内にも墓参者専用臨時駐車場として、一部の通路沿いにも停められるようになっていました。両彼岸や花見の季節は通行規制されることもあります。
区画整理がしっかりされていますし、都区内の霊園のなかでは、どこから来ても、どこへ向かうにしてもアクセスしやすいと思います。
青山霊園の施設
青山霊園の墓地使用・募集状況
青山霊園には、いわゆる一般埋蔵施設とよばれる一般区画の墓所のほか、立体埋蔵施設(第1〜5区)があります。
施設の種類 | 使用者数 | 埋葬体数 |
---|---|---|
一般埋蔵施設 | 14,042人 | 129,381体 |
立体埋蔵施設 | 969人 | 3,689体 |
令和4年度の一般貸付募集は、6月15日(水)~7月4日(月)まで行われる予定です。
令和3年度の一般埋蔵施設の抽選倍率は、13.3倍でトップでした。令和4年度は55ヶ所の募集で、例年並みとなっています。今年も狭き門の抽選となりそうですね。詳しくは募集の詳細が出たら、チェックしてみましょう。
昨年までの状況ですが、気になる価格帯、どのくらいの人が応募しているのか、抽選倍率や、青山霊園に申し込める人などをまとめていますので参考まで。
立体埋蔵施設
青山霊園には、一般埋蔵施設のほかに立体埋蔵施設もあり、第1区〜第5区までが敷地内に点在しています。
立体埋蔵施設は、20年間は地上にあるカロートに骨壷の状態で埋蔵し、その後は遺骨を納骨袋に移して、施設内にある地下カロートに共同埋蔵されるものです。
こちらは比較的大きめの第4区立体埋蔵施設。
正面に合同献花台、その奥が個別に仕切られた立体埋蔵カロートとなっています。南側・北側それぞれに4段ありました。
「都立霊園 立体埋蔵施設 使用の手引」によれば、幅・奥行きとも25cm以内、高さ28 ㎝以内で、一区画に3体まで納めることができます。名板の仕様は決められており、任意に家名、埋蔵者名( 本名 )、生年、没年のほかは刻字できません。
この区画では2段目しか名板が使われていないようでしたが、少なくともここ3年は定期での募集がされていないようです。
20年ごと順次入れ替えも発生するはずですし、この立地でこれだけきちんと整備された施設であれば、募集されたら最注目となることは間違いなさそうです。
外人墓地
外国人墓地といえば横浜が有名ですが、東京一規模の大きい外人墓地が、ここ青山霊園にあります。
中央通りに面して、それと分かる一帯が広がっていました。幕末から明治期にかけて日本の近代化に大きく貢献された、外国人とそのご家族が眠られているそうです。
平成18年から都が管理しており、当時の都知事・石原慎太郎名の顕彰碑も。歴史的にも文化的にも大切に守られてほしいですね。
青山霊園の有名人の墓
青山霊園には、有名人・偉人のお墓がたくさんあります。管理事務所では園内マップや歴史的墓所ガイドのほか、「作家・評論家編」「女性編」「経済人編」「外人墓地編」「林学・造園家編」といったジャンル別に詳しい解説付きのリーフレットなども用意されていました。
墓マイラー的ガイドブックにも、青山霊園に関する情報が満載なこともあり、どこから参ろうか迷ってしまうほど。事前にしっかりとルートを決めないと大変なことになりそうです。
今回訪ねたかった墓地は、別途ご紹介することにいたします。
上野英三郎と忠犬ハチ公のお墓
英語版の案内があったので、外国人はどのお墓が興味あるのだろうと見てみたところ、「Hachi」イラストを発見。
大久保利通(薩摩藩士〜政治家)、乃木希助(陸軍軍人)と並んで、ハチが載っているとは驚きました。外国人に人気の観光地・渋谷スクランブル交差点前のハチ公広場や、忠犬ハチ公像が有名なのでしょうか。知名度のほどはわかりませんが、日本では超メジャー犬でしょう。
青山霊園には、ハチ公の主人である上野英三郎博士(1871-1925)のお墓と、その側に『忠犬ハチ公の碑』があります。
上野英三郎(うえのえいざぶろう)
職業:東京帝国大学農学部教授、農業工学の始祖/生没年:1871〜1925/墓所番号:1種ロ 第6号 12側 1番甲
上野博士の墓所の脇に、後年「忠犬ハチ公の碑」が建てられました。
忠犬ハチ公は実在の犬。上野氏が亡くなった後7年間も、朝夕決まって渋谷駅前で主人を待つ姿は、新聞に掲載されて日本中で有名になったといいます。昭和10(1935)年3月に渋谷駅で亡くなっていたハチは、剥製になって上野の国立科学博物館に展示保管されているそうです。ですから、ハチ公の方は遺骨がそこにあるわけではありません。
上野博士のお墓の区画内には石祠が建てられており、ドッグフードや犬のおやつなどがたくさん供えられていました。ハチ公像で待ち合わせする人はいても、お供えはできませんから、ここを訪れる人も多いのでしょう。渋谷からそう遠くない地で供養されているのは、両人(犬)にとっても、なんだか幸せそうに感じられました。
青山霊園をあらためて
今回はさくっとお散歩がてら、園内を歩いてみました。遠くに六本木や高層ビル街が見える場所もあれば、見渡す限り空が広がる地帯もあり、さまざまな表情を見せてくれる青山霊園でした。
しんと静まり返った墓地のなかでふと我に返るのは、ジェット機が低空を飛んでくるときでしょうか。飛行路が増えて、港区あたりでもわりと頻繁に通るようになったようです。お墓の真上を大きな飛行機が通るのは不思議な光景にも見えましたが、古くからお墓の下に眠る先人たちにはどう映っているのでしょうか。
さて、青山霊園の広さには驚かされてしまいました。東京ドーム5個がすっぽり、という感じです(わたし調べ)。有名人のお墓がこれでもかとありますので、順次訪ねていきたいと思います。
四季折々で訪ねたい霊園でもあり、ゆっくり時間をかけても、変わらずあり続ける、そんなお墓の特徴を象徴するかのようですね。