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【都立谷中霊園】ってどんなお墓? 歴史と町と一体化した散策スポット

台東区谷中というアクセスも周辺の環境にも恵まれている都立谷中霊園(やなかれいえん)。今回は谷中霊園の基本情報と、初めて訪れてみて感じた見どころなどをざっとご紹介します。

あまりにも豊富な有名人のお墓については別記事にて。

一人では見きれないと判断して頼ったのは……?

こんな記事

都立谷中霊園とは

谷中霊園の所在・概要

谷中霊園は、明治7(1874)年9月に東京府が開設した、最初期からある都立霊園4園のうちのひとつです。

都立8霊園 概要一覧

霊園名開園年月日開園面積所在地
雑司ケ谷霊園明治7年9月1日106,110㎡豊島区南池袋4-25-1
青山霊園明治7年9月1日263,564㎡港区南青山2-32-2
谷中霊園明治7年9月1日102,537㎡台東区谷中7-5-24
染井霊園明治7年9月1日67,911㎡豊島区駒込5-5-1
多磨霊園大正12年4月1日1,280,237㎡府中市多磨町4-628
八柱霊園昭和10年7月1日1,046,468㎡千葉県松戸市田中新田48-2
小平霊園昭和23年5月1日653,545㎡東村山市萩山町1-16-1
八王子霊園昭和46年4月1日644,305㎡八王子市元八王子町3-2536

谷中は江戸時代の都市計画によって多くの寺院が集められた門前町であり、谷中霊園は主として谷中天王寺の敷地等を引き継いでます。そのため、付近の寺院の土地や墓地が敷地内に入り組んでいて、霊園とお寺、公園や町が一体となった雰囲気なのですね。

都立霊園の公式サイト(TOKYO霊園さんぽ)から詳しい情報やマップを入手できます。

谷中霊園|霊園・葬儀所一覧|TOKYO 霊園さんぽ

谷中霊園のアクセス

谷中霊園は、JR山手線・京浜東北線、京成線「日暮里駅」だと南口・西口から、日暮里・舎人ライナー「日暮里駅」だとJR・京成線連絡口から、それぞれ徒歩5〜6分となっています。とはいえ地図を見てのとおり、目的地によってだいぶ異なりそうです。「鶯谷駅」からのアクセスでもOKですね。

霊園の北側がJRの線路に接する高台となっており、霊園管理事務所は、日暮里駅方面からさくら通りを南下した先にあります。

所在地:東京都台東区谷中7-5-24

園内は公道も走っていますが駐車場はなく、道も入り組んでいるため、徒歩で入ることをおすすめします。

東京メトロ千代田線の「千駄木駅」や「根津駅」からも徒歩圏内なので、谷中・根津・千駄木エリアの谷根千散歩がてら散策もできちゃいます。

日暮里駅西口方面から行くと、金網の柵で仕切られていますが、扉から中へ自由に入ることができるようになっていました。

谷中霊園の園内案内

谷中霊園の墓所面積は約10万平米(102,537㎡)もありますが、その特徴は、墓地や寺院、道路や私有地が入り組んでかなり複雑な形であることでしょう。

園内マップPDF|東京霊園さんぽ

特に天王寺墓地との境や、曲線を描く区画のあたりはわかりづらいですね。まずは管理事務所で園内マップを入手しましょう。マップ裏面には、谷中霊園に眠る著名人墓碑一覧が、墓所番号とともに掲載されていて便利です。

管理事務所
管理事務所前、谷中看板がかわいい

霊園の中央付近には、幸田露伴の小説『五重塔』のモデルになった天王寺五重塔の跡(都指定史跡)があり、付近はベンチなどもあります。まずはこのあたりを目指すと、全体が把握しやすいかもしれません。

天王寺五重塔跡

谷中霊園の施設

谷中霊園の墓地使用・募集状況

谷中霊園には、いわゆる一般埋蔵施設とよばれる一般区画の墓所のほか、立体埋蔵施設(第1〜5区)があります。

谷中霊園の使用状況(令和3年4月1日現在)


施設の種類
使用者数埋葬体数
一般埋蔵施設6,307人53,207
立体埋蔵施設1,167人4,135
霊園案内より抜粋

一般墓所等の貸付は昭和35年から長らく行われていなかったところ、平成19年からは再開されているようです。

令和3年度はすでに締め切っていますが、一般埋蔵施設で67の再貸付の募集があり、立体埋蔵施設は募集なしでした。

今年度募集のあった都心部の都立霊園の、一般埋蔵施設の抽選倍率は以下の通りです。

令和3年度の公募倍率

霊園名区画面積募集数受付数倍率(昨年比)
青山霊園(AO01組)3.05 ~ 4.00㎡3230010.5 ⤵︎
青山霊園(AO02組)1.55 ~ 2.00㎡2440117.1 ⤴︎
谷中霊園(YA01組)3.10 ~ 3.95㎡18844.7 ⤵︎
谷中霊園(YA01組)1.60 ~ 1.70㎡494318.8 ⤴︎
染井霊園(SO01組)1.50 ~ 1.80㎡443036.9 ⤵︎

※倍率は受付数÷募集数で算出し、小数点第2位を四捨五入しています。

青山霊園ほどではありませんが、狭き門であることには違いありません。使用料に関しては、青山霊園に次いで高額となっています(下記記事をご参照ください)。

一般墓所区画

一般墓(一般埋蔵施設)のある区画を歩いてみますと、じつにさまざまな表情がありました。高い建物は見えず、とても都会とは思えない雰囲気です。

整然とお墓が並んだ一般の区画。

公道に沿った並木道は曲がっていると視界が遮られるため、夜はちょっと怖いくらいかもしれません。

立体埋蔵施設

谷中霊園内には、第1区〜第5区まで5カ所の立体埋蔵施設があります。

立体埋蔵施設(第2区)

建物壁面に墓碑銘プレートが設置されており、合同の献花台と、いくつかのお線香台(香炉)が並んでいます。きれいでお参りもしやすそうですね。毎年都民の日に、施設による合同献花が行われています。

谷中霊園の立体埋蔵施設の新規貸付を停止しているとの情報はありませんが、令和2年度・3年度に関しては募集がありませんでした。毎年発行される「申込みのしおり」で確認しましょう。

一般公募の場合、使用許可日から20年間、地上カロート(納骨室)に個別埋蔵したのちに地下カロートに共同埋蔵するもので、遺骨3体まで納骨できます。

谷中霊園の見どころ

台東区観光ボランティアガイド

じつは今回初めて谷中霊園を訪ねるにあたって、方向音痴なわたし一人では不安があったため、台東区観光ボランティアガイドさんの谷中案内がある日を狙って、訪ねてみました。

なんともラッキーなことに、一人のガイドさんがついてくださったため、谷中霊園中心にガイドをお願いしたのです。

案の定、一人では到底知り得なかったであろうことをたくさん教えていただきました。

今回お世話になったのは、1時間程度の町歩きで谷中の魅力を伝えてくださるフリーガイドというものです。谷中では毎週日曜に実施されています。詳しくはこちらをぜひご確認ください! 本当におすすめです。

谷中霊園内で教えていただいた見どころのうち、印象に残ったものをご紹介します。

護国山天王寺

谷中霊園に隣接するのが、天台宗の護国山天王寺(ごこくさんてんのうじ)です。

開かれた門をくぐると、見上げるほど大仏様が。台東区有形文化財にも指定されている銅造釈迦如来坐像です。

銅造釈迦如来坐像

制作時期は元禄3(1690)年、天王寺の前身であった日蓮宗感応寺最後の住持によるものとされています。もともとは五重塔近くにあったものが、谷中墓地開設のためにこの場に移され、昭和に入ってつくられたコンクリート製の基壇が作られたのだそうです。

都立霊園を訪れて、こんな大きなお釈迦様を拝めるとは知らず、静謐な気分と歴史を感じることができました。

谷中霊園の石碑たち

谷中霊園には大きな石碑がたくさんあり、ガイドさんが主なものを紹介してくださいました。

大審院長玉乃君碑 玉乃世履

3〜4メートルはありそうな背の高い石碑が、次々と出現して驚きます。

近寄ってみるとなんとも美しい文字が彫られているではありませんか。

書に詳しいガイドさんによれば、誰がどんな功勲を残したのか、いつ誰が彫ったのか、といった細かい情報までしっかり読み取れるのだそうです。なんとも奥深い石碑の世界……。

管理事務所にて「石碑ガイドマップ」なるものを見つけました。これはゲットしたい!

「さくら通り」に面したものだけでも40碑分の概要が掲載されています。霊園内ではさらに多くの石碑を目にしましたので、ここは石碑の宝庫なのかもしれません。

石碑の種類や由来など、まったくの素人にとっては見分けもつかず恐縮でしたが、それぞれの存在感に日本を発展させた近現代に貢献した人物の功績を垣間見た気がいたしました。お好きな方はぜひ。

谷中霊園の竹垣

もうひとつ見つけたのが日本古来からの竹垣に着目した「竹垣マップ」。ここ谷中霊園に、種類豊富な竹垣が集結しているようなのです。

日本の竹垣の歴史は、ほぼ平安・鎌倉時代に発展したことが当時の絵巻物等によって知られています。竹はもっとも手近な素材であっただけに、安上がりな囲い等の材料として愛され利用されました。江戸時代になると、全国に庭園や露地が作られ、竹垣も各地に広まり様々な形式が創造されました。竹垣の形式は実にさまざまで、同種の垣であっても部分的に変化を見せた形や、他の種類の垣と結合した構造の垣も多くあります。

谷中霊園 竹垣マップより

谷中霊園ではこうした案内のほか、竹垣の手入れも担当しているようす。今回あとから知ったため、それら竹垣の勇姿は見逃してしまいましたが、次回は気をつけてチェックしてみたいと思います。

有名人のお墓

歴史ある谷中霊園は多くの有名人の墓所はもとより、敷地内の寛永寺墓所に徳川慶喜公のお墓があることでも有名です。

以下、谷中霊園で参ることができたおもな著名・有名人のお墓については、別記事でご紹介いたしますね。ボリュームが……。

  • 第15代徳川慶喜公(寛永寺墓所)
  • 実業家・渋沢栄一
  • 彫刻家・朝倉文夫
  • 日本画家・横山大観
  • 元内閣総理大臣・鳩山一郎
  • 政治家・大原重徳
    ほか

谷中霊園を訪れてみて

区部にある都立霊園では染井霊園、雑司ヶ谷霊園につづいて3園目の散策となりましたが、今回ガイドさんと一緒だったのは大正解でした。それだけ見どころが多すぎるのです。

一人では知り得ない情報を教えてもらい、地図だけではたどり着けたかどうか分からない場所も巡ることができました。また霊園の外でもいくつかの名所旧跡を教えていただき、たいへん充実した1日となりました。改めて、ありがとうございました。まだ一部区画しか見れていないので、次回もお願いしたいくらいです。

谷中霊園は、いち霊園というより、谷中の街と一体化した公園墓地として、街の歴史も込みで感じる霊園なのだと思いました。もちろん現在のありようというのも魅力的なのですが、ちょっとした時代錯誤感が味わえますよ。

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