お墓のあり方にも多様化の波が来ています。そのひとつが「自宅墓」です。今年だけでも「室内に置けるお墓」のニュースを多く目にしました。そもそも「自宅墓」ってどんなものなのでしょうか? おもな製品の仕様についても、ピックアップして見ていきます。

続々登場する「自宅墓(じたくはか)」について調べてみました。
「自宅墓」とは?
「自宅墓」とは、その名の通り「自宅にあるお墓」なのですが、「自宅にお墓って建てられるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
その疑問に答えるならば、一般墓を自宅のお庭などの屋外に建て、遺骨を埋葬することはできません。日本では、お墓は各自治体に認められた埋葬地(墓地・霊園など)にしか建てられませんし、個人宅が許可を得ることはまず不可能でしょう。
散骨も同様でして、自身が所有する土地であっても、遺骨を埋葬したり、土に還すことは認められていません。
ですから近年聞くようになった「自宅墓」とは、家の中、室内(屋内)に設置するお墓のことを言います。
自宅で故人を供養するという意味では仏壇のようでもありますが、ここでは遺骨・遺灰を納めるかどうかで、自宅墓と仏壇を一旦棲み分けてみたいと思います。
一方で、ご遺骨の一部(あるいは全部)を手元に置いて供養することを「手元供養」と呼びます。

遺骨・遺灰を納めるための手許供養品には、骨壷はもちろん、工夫を凝らしたお骨入れ、インテリアに馴染む置き物、ペンダントとして身につける品などさまざまな種類があり、これらの延長線上に「自宅墓」があると考えてもよいでしょう。
「自宅墓」の背景
今年に入って、「たくぼ(宅墓)」「家墓(かぼ)」など、家の中に置ける「自宅墓」が注目されているという記事が注目を集め、供養の新しい形としてテレビの情報番組でも取り上げられていました。

コロナ禍でお墓参りに気軽に行けなくなってしまったことも一因とされていますが、それ以前から需要はあったようです。
愛する故人を身近に置いておきたい、日常のなかで供養したいという方や、なんらかの事情でお墓に入れることができない方、あるいは諸事情からお墓を決められず、自宅にお骨壷を保管している人も少なくないといいます。
供養コンシェルジュ協会によせられる供養の相談のほとんどが「遺骨関係」だとも聞いたことがあります。ご遺骨をどこに置いておくかは、お墓を決めることそのものです。
「自宅から離れた墓地や納骨堂ではなく、手元で供養していたい」というニーズに対して、現代の家事情やライフスタイルに合わせ、あたらしいお墓の形を提案しているのが「自宅墓」なのです。故人にとっては住み慣れた自宅に戻ることになり、家族にとってもより身近に偲ぶことができそうです。
石材タイプの「自宅墓」3選

お墓といえば、やっぱり石のイメージですよね。今回は、石材でつくられた「自宅墓」をピックアップしてみます。
石をつかったミニチュア墓「たくぼ(宅墓)」
滋賀県の石材店「浦部石材工業」さんによる「たくぼ(宅墓)」は、5年前から販売されている先駆け的な「自宅墓」です。
「自宅にちいさなお墓のあるくらし」を提案する「たくぼ(宅墓)」のパンフレットから、おもな特徴を見てみましょう。
- 2寸骨壷を墓石内に安置できる、小型設計
- 好みやインテリアに合わせて、5色の天然石から選べる
- 1体タイプの「たくぼ」2種のほか、2体タイプの「夫婦(めおと)たくぼ」「二人たくぼ」もあり
- 1体タイプが税込7万円〜、2体タイプが税込14万円〜とリーズナブル
- 指定の家紋やオリジナルデザインの字彫りも可能
こちらの動画では、製作者の方のお話を聞くことができます。
石材店さんだからこそ聞けるお客様のニーズにあわせ、開発・改良が重ねられていることが分かりました。インテリアに馴染むことを目指して5色を取り揃えているのも、従来のお墓の概念から一旦離れてみた結果だったそうです。
御影石のお墓を省スペースで「家墓(かぼ)」
「家に置ける小さなお墓」の「家墓(かぼ)」は、経済的負担をおさえながらも、ご自宅でも安心してできる手元供養を提案しています。
- クレー御影石、ピンク御影石、黒御影石の3カラーから選べる
- B5ノートよりも小さなスペースに置ける
- 1体タイプで本体税込61,380万円〜、2人用が税込94,380円とリーズナブル
- 墓じまいのサポート、入りきらない遺骨の永代供養や海洋散骨の手配が可能(別途料金)
- 法要・法事の際の、僧侶派遣の紹介あり(別途料金)
「家墓(かぼ)」は、美しい御影石に職人が心をこめて彫刻し、丁寧に仕上げることを前提に、ご自宅で供養するために必要となるあらゆることを想定し、サポート体制を整えているのが強みでしょう。
墓じまいを伴う場合や、残った遺骨の行く先までを相談できる環境を整えているほか、オーダーに際しても明朗会計で分かりやすく、オプションとしておしゃれな骨壷や仏具セットなども取り揃えています。
もちろん、省スペース設計で経済的負担も軽く、お引っ越しなどにも対応しやすいという自宅墓のスタンダードも兼ね揃えていますね。
さらに、ペット向けコンセプトの「minibo(ミニボ)」もラインナップがあり、ペット供養のニーズにも応えています。
永代供養もつけられる「おくぼ」
2021年8月に登場した自宅墓の「おくぼ」は、最新の商品だけあって、かゆいところに手が届くサポートを提案する自宅墓です。


- B5サイズにおさまる省スペースのセット商品で税込80,000円〜
- 職人手作りのステンドグラス写真立て付きで、インテリア性も重視
- ミニ墓石は黒御影石、ピンク御影石の2種類から
- 送料無料のネットショップでオンライン注文がスムース
- 樹木葬墓地での永代供養サポートプラン(税込148,000円)あり
- 戒名無料、デジタル過去帳の利用、定額(5,000円)でオンライン個別法要が可能、合葬墓にプレート設置
「おくぼ」が提案するのは、インテリア性や省スペース性はもちろん備えたうえで、購入から供養までをすべて自宅からで出来ること。オンラインショップサイトでは、デザイン豊富で素敵なステンドグラスを、ご自宅にいながら選ぶことができます。
さらに画期的なのは、将来自宅で管理できなくなったあとの永代供養があらかじめ用意されていることです。
この「永代供養サポートプラン」では、お寺の住職に戒名を付けてもらえるほか、故人の歴史や思い出を残せるデジタル過去帳「いとろぐ」のサービス利用も含まれています。
また、別料金で個別のオンライン法要を行ってくれるサポートもあるので、自宅でのご供養も、将来のご供養も安心して行うことができるのです。

(追記)こちらの記事でより詳しくご紹介しています。

石材タイプの「自宅墓」3選・仕様比較
「たくぼ(宅墓)」「家墓(かぼ)」「おくぼ」のおもな仕様をまとめてみました。
たくぼ(宅墓) | おくぼ | ||
---|---|---|---|
石材 | 天然石材5色(くろ、しろ、あか、ピンク、みどり) | クレー御影石、ピンク御影石、黒御影石 | 黒御影石、ピンク御影石 |
価格 | たくぼ 台座 小・大とも:税込70,000円〜 二人たくぼ・夫婦たくぼ:税込140,000円〜 ※送料別 ※骨壷は含まれず | 1人用:税込61,380円〜 2人用:税込94,380円〜 ※送料別 | セット価格:税込80,000円 永代供養サポートプラン:税込148,000円 ※送料込み |
サイズ | たくぼ 台座 小: 幅170mm×奥行230mm×高さ172mm たくぼ 台座 大: 幅210mm×奥行297mm×高さ172mm | 1人用:幅16cm×奥行16cm×高さ18cm 2人用:幅26cm×奥行16cm×高さ18cm | (台座)幅180mm×奥行255mm (墓石)幅135mm×高さ135mm×奥行135mm |
重さ | たくぼ 台座 小:約9kg (台座 約4kg、納骨部 約5kg) たくぼ 台座 大:約10.5kg (台座 約5.5kg、納骨部 約5kg) 二人たくぼ:約19kg (台座 約9kg、納骨部 約10kg) 夫婦たくぼ:約16kg (台座 約8kg、納骨部 約8kg) | 1人用:約8.3kg (台座 約3.8kg、納骨部 約4.5kg) 2人用:約13.6kg (台座:約6.5kg・納骨部約:7.1kg) | 約7〜8kg程度 (台座 2.4kg、墓石4.4kg、ほか骨壷、写真立て等) |
納骨量 | 2寸骨壷分まで (別売り) | 2.0~2.5寸までの骨壷に対応 (別売り) | 2寸骨壷(付属) |
販売 | 浦部石材工業有限会社(滋賀県) | 株式会社ファーストインダストリーズ(千葉県) | 山野石材株式会社(福岡県) |
まとめ
今回は従来のお墓のイメージから、「石」をつかった「自宅墓」から3タイプをざっくりとご紹介しました。気になることがあれば、それぞれのサイトで、より詳しくチェックしてみてくださいね。
客観的に見て、石をつかって最小限のお墓を作ると、このような形になるな、ということはよく分かりました。個々人の好みやニーズあわせ、選べる商品が多数あることは喜ばしいことです。
石以外では、木材をつかったもの、ガラスをつかったもの、仏壇と一体化したタイプなどもあり、「自宅墓」と呼べるものはこれからも出てきそうです。それぞれ工夫を凝らしたり、お墓にまつわるさまざまなサービスを付加したり、今後の動向にも期待しつつ、気になるものは、随時ご紹介していきますね。
お墓のあり方・供養の考え方は人それぞれなので、いわゆる「自宅墓のメリット・デメリット」のような画一的なことには触れていません。ただ、自宅墓を考える際に気をつけておきたいことは、将来的にどうするか、ということでしょうか。どんなお墓にも言えることですね。今あるお墓や先々のことも考えて、検討することが大切だと思いました。
※本記事の内容や商品の価格は執筆時点(2021年8月)のものです。
