【お墓と映画】「死者の日」を描く『リメンバー・ミー』に万人が涙する理由

11月に入る前に、見直しておきたい映画がありました。メキシコの「死者の日」を扱ったアニメーション映画『リメンバー・ミー』です。外国のお墓の伝統や風習、考え方を知ることができるとともに、日本人とも共通する部分も多くあるので、ぜひ見ていただきたい感動映画なのです。

メキシコの伝統行事をテーマに、万国共通の感動を生むからすごい!

こんな記事

映画『リメンバー・ミー』とは

出典:eiga.com (C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

映画『リメンバー・ミー』
原題:Coco 
2017年製作/アメリカ/カラー/105分
製作:ダーラ・K・アンダーソン/監督:リー・アンクリッチ(『トイ・ストーリー3』)

『リメンバー・ミー』は、2018年に日本公開された、ディズニー&ピクサーによるアニメーション映画。2018年の米アカデミー賞では、長編アニメーション部門、主題歌部門で最優秀賞を受賞しており、作品的にも評価の高く大ヒットした映画です。

『リメンバー・ミー』あらすじ

主人公はメキシコの少年・ミゲル。なぜか「音楽」を一切禁じられた家で育てられていますが、じつは音楽が大好きで、ミュージシャンになることを夢見てこっそりギターを弾いては歌っています。家族が伝統行事「死者の日」の準備を進めるなか、ミゲルはふとしたことから憧れの伝説的ミュージシャン、デラクルスの霊廟から「死者の国」に迷い込んでしまいます。

「死者の国」に暮らすご先祖や親戚たちに会ったミゲルは、死者の国のルールを知ることになります。日の出までに元の世界に戻れないとミゲルの身体は消えてしまう! 現世に待つ人がいない孤独なヘクターと出会って、元の世界に帰る方法を探すことにしますが……。

ミゲルはこの一夜の冒険で、音楽を禁じられた一家の真実と、伝説の歌手がのこした名曲“リメンバー・ミー”に隠された秘密を知ることになります。怒涛の展開です。

そして、現世で鍵を握っていたのは、曾おばあちゃんのココ……!?

半分ネタバレして申し訳ありません。泣かないわけにはいかないシーンです。本編もぜひ見てください。

映画本編の視聴はこちら(Amazon Prime Video)

『リメンバー・ミー』の見どころ

「死者の日」がテーマで大丈夫?

メキシコのローカルな行事「死者の日」をテーマに据えている点で、それまでのディズニー・ピクサー映画とはちょっと一線を画しているように思われます。

主人公がメキシコ人であることは、ディズニーが目指す多様性のあらわれでもありそうですが、宗教的な要素を多分に含むであろう伝統行事が物語の中心にある点が、ファンタジーとして捉えられるのか、というところ。

でも、そんな心配は無用でした。家族の絆や、音楽という普遍的な価値のもと、見事に感動させられましたし、映像の美しさも圧巻でした。ラテン人らしいユーモアが随所に散りばめられて、こんなにも「死」が明るく楽しい世界にできるんだと感心もしました。

物語の大半は、少年ミゲルが迷い込む「死者たちの国」が舞台になるのですが、ここがもうファンタジーの世界なのです。1年に1度「死者の日」にだけ、あの世とこの世がつながる橋(マリーゴールドの花びらでできている)がかかる特別な、まるで夢の国に入るようなシーンです。

設定が普遍的かつ万国共通

ただし、この橋を渡れる死者には条件があります。それは、「現世で、死者の日の祭壇に、その人の写真が飾られていること」。飾られていなければ、待っている人がいないないと判断され、ゲートを通してもらえないのです。

待っている人がいる死者たちは、うきうきと出かけていきますが、ゲートを通過できなければ、死者の国に戻り、また次の年を機会を待たねばならないのです。もう、せつない。待つ人がいないのに、帰っても歓迎されませんから、当然と言えば当然、むしろ、その人を守ることにもなっているのかも。

さらにもう一つ、死者の国で生き続けるには、現世にその人を覚えている人が必要というルール。

現世で存在が忘れられてしまった瞬間、覚えている人がいなくなってしまった瞬間に、死者の国での肉体(骸骨…)が消えてしまうのです。つまり、終局的な死を迎えるという訳です。ダブルでせつない。

つまり、現世にその人のことを覚えている人がいる間だけ、死者の国でも生きることができ、その人が現世で死んだら、死者の国でも消えてしまう。適度に代変わりする仕組みでもあって、死者の国の死者(ややこしい)も増えすぎることがないですから、良くできた設定ですね。

有名人は多くの人がその存在を知って覚えているというアドバンテージがあるのも面白いところ。少年ミゲルもビデオテープを通じて往年の人気歌手デラクルスに憧れているので、彼は死者の国でも生き続け、人気者という設定なんです。

よく練られた設定は、「死者の日」という行事の域を超え、万国共通の普遍的なあり方として受け入れられそうです。

メキシコのお墓文化を知る

さて、映画で描かれるお墓はどんなところでしょうか。

物語はメキシコの「死者の日」にはじまります。家族たちはもちろん町中が、この行事の準備に大わらわで賑わっています。

毎年11月1日と2日に祝われるという「死者の日」の伝統行事は、死者を偲び、感謝し、生きる喜びを分かち合うものだそう。アステカの風習やキリスト教の教えから生まれ根付いた文化で、今も盛んに行われているよう。アニメでの描写は、現地の緻密で徹底的な取材をもとにして、描かれているそうです。

人々は家では祭壇に先祖や家族の写真を飾り、マリーゴールドの花やカラフルな飾りで彩り、伝統的な食べ物を供えます。街は切り絵でできたフラッグが飾られます。この切り絵は物語でも効果的につかわれていますよ。イベントも盛りだくさん行われます。

ミゲルの住む街の大きな墓地では、土葬らしきお墓にマリーゴールドを供え、伝統的な食べ物を持ち寄って、墓前に家族が集う風景が描かれています。夜になるとキャンドルが灯り、家族のそばには、死者の国からきた人々も一緒に集っています。

お互いが見えることはありませんが、ミゲルだけに(観客にも)見えるその風景は、なんとも温かく幻想的な世界が広がっていました。

メキシコの「死者の日」は、日本のお盆の風景に似たものがありますよね。ビジュアルは大きく違うし、迎え方は少し異なりますが、お盆の時期にはご先祖さまが安心して帰れるようにする風習があるのは同じです。沖縄などでは、墓前で宴会をしたりもしますから、より近い感じがします。

これまであまり知らなかった「死者の日」の文化を知ることができただけでなく、ディズニー&ピクサーのメジャー大作でこんなにも素敵に描かれることで、お墓を大切な場所として大事にするカルチャーが全世界で受け入れられてるんだと、確信もできました。

まとめ

この映画を映画館で見たとき、小学生の娘が涙をつーっと流していたのが印象的でした。死者の国なんてちょっと怖いかな、とも思っていたのですが、ストレートに通じるものがあったようです。

先祖がいなければ命がつながっていないこと、それを覚えていることが大切なんだと、感じてくれていたらいいな、と思います。

そういえば、NHKの番組『ファミリーヒストリー』のエンディングテーマ曲は、くるりの「Remember Me」。わたしはこの番組もこの曲も大好きなのですが、たいていあの曲が流れてくるタイミングで、涙腺がじわりと刺激されますよね。

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