「お墓参り」をテーマにしたカードゲームがあるのをご存知ですか? その名も「盆暮れ正月両彼岸」。現職のお坊さんが企画・制作したという本格的なゲームなのです。できたてほやほやの完成品をプレイしてみたので、ご紹介します。
「お墓参り×ゲーム」のコンセプトに期待!
お墓参りがカードゲームに?!
今年のはじめ頃、Twitterでこんなクラウドファンティングが目に留まりました。
※2021/01/15に募集を開始し、88人の支援により450,000円の資金を集め、2021/02/23に募集を終了
お墓参りをカードゲームで表現しました!お寺や仏教をテーマにしたボードゲームを製作しつづけて5年。今回で9作目です。ぜひ手にとって、遊んでみてください!合掌
向井真人(陽岳寺副住職) プロジェクトご挨拶より
「お墓」に注目していたわたしですが、そこに「ゲーム」というエンタメ要素が入っているのが斬新でした。よく読んでみると、仕掛け人は深川の禅寺・陽岳寺(ようがくじ)の副住職でいらっしゃる向井真人さん。つまり現役バリバリのお坊さんの思いが詰まったカードゲームだというではありませんか。
お坊さんといえばお寺、お寺といえばお墓。お墓に詳しいに決まっていますし、日々ご供養に携わっているからこそお墓参りに対して、思うことや表現できるものが多くありそうです。
しかも向井さんは、お寺や仏教をテーマにしたボードゲームを制作して5年という筋金入り。きっとゲームとしてのクオリティも高いに違いありません。
「お墓」を追っかけ中のわたくし、勝手ながらの共感とご縁を感じまして、予約購入させていただいたのでした。
「盆暮れ正月両彼岸」パッケージと中身
ちょうど春のお彼岸の頃、待ちに待った完成品が届きました。
コンパクトな箱にやわらかいイラストの絵柄、タイトル周りや色味もとっても可愛いです。
「盆暮れ正月両彼岸」さっそくプレイ
休日の午後、わたし、夫、娘の家族3人でプレイしてみました。テレビゲームが大好きなデジタル世代の小学生も、パッケージから可愛いのでつかみはOK、テンション上がります。
お墓参りトリックテイキング
盆暮れ正月両彼岸
【対象年齢:10歳以上/プレイ人数:3〜5人/プレイ時間:20分】
遊び方説明書とにらめっこしながら、さっそくスタートです。まずは一通りルールを知るための慣らしゲームから。
「トリックテイキング」という言葉は聞き慣れませんでしたが、ミニゲームの手順の単位を「トリック」といい、決められた制限のミニゲームで勝つこと/カードを取ることを「トリックテイキング」というそうです。
本作の面白いところは、ミニゲームの単位が一回の「お墓参り」となっていること。
その時期が、「春彼岸」「7月盆」「8月盆」「秋彼岸」「暮れ」「正月」と指定されていて、お墓参りを順に12回、つまり6回×2セットの2年分繰り返すと、最後に勝者が決まるのです。トリックテイキングがうまくハマっていますよね。
スタートのルールも「今日からもっとも近いイベント日」から始まり、「一番最近お墓参りをしたプレイヤーが親」と決まっています。今なら「7月盆から始まって、直近でお墓参りしたわたしが親でスタート!」となる訳です。
娘はすでに「7月盆ってなに?」「両彼岸って?」となってるのですが、ルールをなぞって進めながら、徐々に説明をしていきました。
テストプレイを最後まで終えてみて、やっと「なるほど!」とわかってくる、じわじわくるゲームです。つたないながらも何度かプレイすると、だんだんと要領がつかめてきました。
詳しいルール説明は下記ようがくじさんのHPにて。というか、簡単に説明できる内容ではない……奥が深いのです。
「盆暮れ正月両彼岸」のありがたみ
テーマ選定もさることながら、ゲームとしてもよく考えられていて、感心しきりでした。まだ数回プレイした程度ではその深みには到達していませんが、なるほど納得のありがたいポイントをあげてみます。
①ネーミングと言葉選び
なにをおいても商品名の「盆暮れ正月両彼岸」。
これっていわば、お墓参りの繁忙期のことですよね。ふつうの人は並べて使わない……使っても「盆暮れ正月」までかな。そこに春夏のお彼岸をくっつけてきちゃう。お坊さんだから出てくる言葉の並びから、ちゃんとお墓参りを連想できるところが素晴らしいです。
そしてゲーム中に使っていく用語に、これまた界隈の特殊用語をキャッチーに取り入れてる点。
「オモイ」「ゴエンポイント」「ご縁があります宣言」「ホン参り」「マイリサキ」などです。
「?」だらけからはじめた小学生でも、自然と使っていくことになり、プレイとあわせて意味も掴んでいくようになります。
「おぼうさん」フダが切り札的に一番強力なのもちょっと面白かったです。百人一首で坊主めくりなんてありますが、お坊さんを身近にしながらも、実は特別な、頼りになる存在であることも納得です。
②深刻になりすぎない
お墓参りの対象には、「おばあちゃん」「おじいちゃん」「おじさん」「おばさん」「あのおじさん」「ぼうや」がいるのですが、それぞれのカードにお供物のイメージイラストが。
「おじいちゃん」のタバコ、「あのおじさん」は馬券? って、あえての昭和っぽさが突っ込みどころ。
子どもには、お墓参りでは故人の好きだったものをお供えする行為や思いがあればいい、ってことさえ伝わればOK。ユーモラスでわかりやすく、ゲーム上で「なんで死んじゃったの〜?」なんて言っても深刻になりすぎない気軽さがありますよね。
③経験不足を補ってくれる
子どもにとってゲームの中での常識は、学校では教えてくれないことばかり。わたしたち親世代だって、知らなかったり忘れていたり。だから教えられてないし、圧倒的に経験不足と言わざるを得ません。
機会がないと触れられないのがお墓なのですが、現在の状況では、そもそもお墓がどんなものか知らないという事態が十分起こり得るのです。
「盆暮れ正月両彼岸」を楽しみながらプレイすることが、そうした経験不足を補い、想像力を養いながら、その家なりのお墓に置き換えて話したり、ご先祖さまを思う機会になるのではないかと思います。
まとめ
ゲームを通じて「お墓参り」を身近なものにしたい! というコンセプトに共感した「盆暮れ正月両彼岸」。プレイしてみて、より強くその意図を感じました。
家族にとっても次のお墓参りへのきっかけになるし、きっと心情にも変化があるだろうと思います。家族間で話題にもしやすくなりました。次はおばあちゃんを誘ってみたり、応用ルールにチャレンジしたり、深めていきたいですね。
ちなみに、わが家の小学生女子は幼い頃からボードゲーム「枯山水」で慣らしてるため、渋めのテーマにも拒否反応がありません。喜んでやっていて「もう1回やろう!」が続きましたよ。
こちらの記事では制作者の向井真人さんの言葉で語られています。より多くの人に届きますように。