【お墓と絵本】ご先祖さまを想うきっかけに「いのちのまつり〜ヌチヌグスージ〜」

ご先祖さまを想う絵本「いのちのまつり」

沖縄には清明祭(シーミー)と呼ばれる一大お墓参り行事があることをご存知でしょうか。毎年旧暦の二十四節気「清明」に行われる伝統行事で、令和3年はちょうど今の時期、4月4日〜4月19日頃になります。(今年はコロナで自粛気味のようですが……)

そんな沖縄の伝統が描かれた「いのちのまつり〜ヌチヌグスージ〜」は、ご先祖さまからつながる命の大切さについての絵本です。小さな男の子の目線で描かれることが、大人にとっても多くの気づきを与えてくれます。

絵本で、お墓やご先祖さまに触れてみましょう。

「いのちのまつり」とは

子どもでも分かる、ご先祖さまを知ったり考えたりする機会がないかと探していたところ、出会ったのがこちらの絵本です。

いのちのまつ「ヌチヌグスージ」
作:草場 一寿/絵:平安座 資尚
2004年10月15日初版発行

「ヌチヌグスージ」はそのまま、沖縄の方言で「いのちのお祝い・いのちの祭り」という意味だそうです。

2004年の発刊以来ロングセラーとなっていて、当時からお母さんたちにも評判だったそうなのですが、まったく知りませんでした。人は見たいものしか見えないもので、今頃になってよく見えてきました。せっかくなのでご紹介させてください。

「いのちのまつり」あらすじ

デイゴの花が咲く頃、沖縄にやってきたばかりのコウちゃん(推定5才)は、大きな石のお家の前で大勢の人が楽しそうにおしゃべりをしたり、踊りだしたりする様子をみて驚きます。すると島のオバアがやってきて「ご先祖さまのお墓参りさぁ〜」と教えてくれました。

「ぼうやにいのちをくれた人は誰ね~?」

「それは……お父さんとお母さん?」

「そうだねえ。
いのちをくれた人をご先祖さまと言うんだよ」

「ねえ、おばあさん、
ぼくのご先祖さまって何人いるの?」

コウちゃんは、指をおって数えてみることにしました。

すると……。

「いのちのまつり」より

コウちゃんのご先祖さまは数え切れません。その誰ひとり欠けても生まれてこなかった自分の「いのち」、目に見えない「いのち」のつながりに気づいたコウちゃんは、感謝の気持ちでいっぱいになるのでした。

***

ご先祖さまを視覚化してくれる絵本ならではの仕掛けが楽しく、体験できることでより読む人に訴えてくる、そんな絵本です。

「いのちのまつり」の背景

作者の草葉一寿さんは、佐賀県で陶彩画家をするかたわら、保育園で10年間子どもたちに絵を教えていました。ふとしたきっかけで沖縄の清明祭に出会い、ここから着想したアイデアを絵本にします。最初は自費出版からだったそうです。

それが出版社の目にとまり、たちまちベストセラーになると、「つながってる!」(2007)「おかげさま」(2010)「かがやいてる」(2013)「みらいへ」(2015)とコンスタントにシリーズを刊行しています。一貫して「いのち」に向き合い、その大切さを伝える絵本です。

草葉さんのエッセイ「毎日がいのちのまつり」には、沖縄の清明祭に出会ってなかったら、「いのちのまつり」は生まれていなかったと書かれています。沖縄ならではの大きなお墓の前にごちそうを並べ親族たちがどんちゃん騒ぎする様子が、それまでのお墓参りのイメージからご先祖さまの概念、そして命の捉え方まで根本から変えてしまったといいます。

沖縄の「今生きているものの中にご先祖さまがいる」「生きているみんなが元気で光り輝いていることこそ最高の先祖供養なんだ」という考え方から、「いのちは続いているのだから自分ひとりのものではない」ことに気づいた、目から鱗の体験だったそうです。

それも「見えないいのちをどう伝えるか」ということに向き合ってきた保育園での経験があったからこそで、巡り合わせのようなものを感じます。草葉さんはその後も、運命的に出会った仲間とともに「いのちの講演隊」を結成し、全国をまわる活動などもしてらっしゃいます。

アーティストであり特別な感性をお持ちの著者のエッセイは、絵本制作の裏話以外でも学びが深いものでした。特に留めておきたいのは、子どもたちの感性を伸ばす秘訣はとにかく「褒める」こと。「好き」から生まれる「感動する」という体験をとにかく多くさせること。忘れずにいたいものです。

ひろがる「いのちのまつり」

「いのちのまつり」は、「命のつながりを知る」というテーマで、小学校の「道徳」の授業にも採用されていました。

“コウちゃんはどんな思いで「ぼくのいのちってすごい」と言ったのでしょう。”という問いから展開させて、「生命の連続性の尊さに気付かせる」指導要綱です。実際に子どもたちがどんな発言をしていくのか、気になります。

昨年のコロナ禍では、朗読劇&ミュージカル化された動画も作られていたのでぜひ。

音楽がついて豪華でより楽しく、集中して見ることができそうですね。

こんな読み聞かせ体験も良いですが、やっぱりお母さんやお父さんが直接、そのご家族なりの名前やエピソードなんかを交えて読み聞かせてあげるのも、絵本の醍醐味でしょう。

いずれも絵本からひろがる対話や経験が重なることで、より深まるきっかけになりますね。

沖縄のお墓・葬送文化から学ぶこと

コウちゃんが「おもしろい形をした石のお家の前で〜」と思っていたのは、沖縄独特の亀甲墓(きっこうばか)です。

中国から伝わった文化が土着化して今も残っている沖縄。
これだけ大きな石造りのお墓となると、その維持管理もたいへんそうではありますが、沖縄の人にとって清明祭(シーミー)という行事やご先祖供養はどうやら特別なことではないようです。

沖縄にはまだまだ一概に括れない、お墓に関する捉え方や文化の違いが多くありそうです。父系の血族で継いでいく門中制度や門中墓があるらしい、ほんの一部には「洗骨」という特殊な弔い方があるらしい……など知らないことだらけ。

では自分の住む地域には、なにか文化風習が根付いているかというと、甚だ疑問です。お墓も、ご先祖も、命に対する考え方も確たるものがなく、信仰もないためにもやもやしているのです。

だからこそ、知ることへの第一歩で、こんな絵本もありがたい。沖縄の明朗な文化を背景にして、普遍的なテーマを考えるヒントをくれますよ。

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