都市部におけるお墓には、お墓が足りない、お墓が高い、承継者がいない、などさまざまな問題があります。その根本には「家」を単位としたお墓の制度が受け継がれてきた背景と、いま現在の状態との大きなズレがあるのではないかと考えています。
実態を探るべく、首都・東京に住む人たちのお墓に関する調査データが何かないか、調べてみました。はたして都民のみなさんは、お墓についてどう考えているのか、その傾向を探ってみます。

東京都民のみなさんの、客観的データや意見が知りたい!
東京都のお墓事情は?
意外と知らないお墓事情
お墓のことに注目してみると、そもそも知らなかったことや「?」と思うことも多くあります。自分の家族のお墓に関しても知らないことが多かったので、反省して整理しているところです。


都立霊園に着目したことから、自分が住んでいる東京では、具体的にどんな状況があるか気になってきました。
- ふだんお墓の話題が出ないけど、みんなどう考えてるの?
- お墓の意味や価値って学校で習ってないよね?
- お墓の管理にもお金かかるけど、問題起きてないの?
- 都営の墓地がもう何十年も開発されていないのはなぜ?
- 東京都と特別区・市町村との連携はどうなっているの?
- そもそも行政は、何をどれだけ把握しているの?
……疑問や知りたいことはいろいろあるのですが、まずは都民の方の意識調査を発見したので、ここから紐解いてみることにしました。
「東京都の霊園」調査
とりあげるのは、「東京都の霊園」というテーマでの都政モニター調査です。
2016年3月の報告なので、5年前と少し古いのですが、概要に「前回調査から10年が経過したことから、都民の墓所に対する意識変化を知るため〜」とあり、10年間隔の調査になると次はしばらく先になりそうなので。
民間企業によるお墓に関する意識調査はよく目にするのですが、東京都に絞っていることと、自治体主導の調査に興味あり。
また、お墓というテーマを前提としないで実施しているため答える側の意識もまちまち、ありのままの実態に近いのではないかということ。そもそもお墓に興味のない数年前のわたしのような人も含まれている訳です。
都政モニターとは?
この調査の対象である、「都政モニター」とは、東京都から年に数回出されるお題についてのアンケートに、インターネットで回答するモニター制度。毎年500人が選任されています。
ちょうど令和3年度の都政モニターが募集中(4月9日〜5月6日)で、概要がこちらに。
「満18歳以上で、都内に居住」「都政に関心があり、協力の意志をお持ちの方」が対象の公募制。
謝礼としてアンケート回答1回につき、500円分の図書カードあり。1年間の任期中に7回のアンケートがあるそうで、各種テーマについて向き合って考えられるチャンスかもしれませんね。
性別、年代、地域等を考慮して500人を選任していますので、男女同率、世代は18歳以上から60代以上まで、有職無職などもまんべんなく、都政に積極的な方々の意見ということになります。
調査項目と回答
調査項目
今回は以下の全調査項目の中から、赤字のみをピックアップしてみます。
都政モニター調査の報告はサイトに概要が、pdfには回答の詳細が掲載されていますので、詳しくみたい方はぜひ。
Q1 墓地・霊園のイメージ
Q2 使用したい霊園のイメージ
Q3 お墓に一緒に入りたい人
Q4 墓地所有の有無
Q5 お墓についての心配事
Q6 墓地の必要性
Q7 お墓を持つ上での問題点
Q8 お墓を持つ場合に重視する条件
Q9 永代使用権への意識
Q10 合葬埋蔵施設、立体埋蔵施設等の利用について
Q11 生前申込みについて
Q12 都立霊園に求める役割
Q13 都立霊園または墓地全般に関する意見(自由記述)
Q4 墓地所有の有無
他の道府県も含めて、約6割以上がなんらかのお墓を持っているのですが、この質問は少々あやふやかも。
主語が「自分や家族が」なので、自分を想定するか、家族を想定するか、おそらく年代によって解釈が異なりそうだからです。もし自分が聞かれたら、今は先行して親のことを考え、「はい(都内に持っている)」と答えます。でも自分のことを考えたら、「持っていない」になるかもしれません。
いずれにしても持っていない人が4割弱もいる。ということは判ります。主語が変われば「持っている」からの一部が加わってくる可能性もあり、かなり多い印象を持ちました。東京都だけで、ざっくり数百万人規模のお墓がないことに……。
細かくみると、年代が上がるにつれ、持っている割合が増えていきます。お墓に対する意識が高くなっていって準備をしているのかもしれません。
Q5 お墓についての心配事
お墓を持っている人の心配ごと、1位にはやはり「承継者」がきました。2位は「維持管理の経費と手間」、3位に「アクセス」と続きます。
限られた選択肢の中からではありますが、要は「自分の死後の維持・管理を、誰がどうしていくのか心配」ということに尽きるのではないでしょうか。
「特に心配事はない」人は13%。今持っているお墓に入ったとき、承継者・管理者の見通しが立っている状態ですよね。承継者とちゃんと話ができているか、あるいは永代供養のお墓を準備してあるか。全体にすると、8%程度が「お墓を持っていて、心配事がない」人です。
Q6 墓地の必要性
大きく意見が3つに分かれていますが、「将来必要になる」人が35%、「必要としていない」人が34.6%とほぼ同率というのは、驚きでした。「必要としていない」は前回の調査(平成18年実施)より5%ほど増えています。
おそらく「お墓」の定義が曖昧なのではないかと思います。合祀(合葬)式、個別式など選べる納骨堂や、永代供養付きの樹木葬なども含めて考えられているか、というところですね。
現在の法律では、死後の遺骨は、埋蔵(お墓に入ること)・収蔵(納骨堂に入ること)以外には、自然葬(散骨)か自宅保管しか選択肢がないのです。要は、葬られるにも保管するにも、場所は必ず必要ということです。
法律的、実務的に考えれば、個別か合祀か、期限付きか永代供養かを問わず広く「お墓」なのですが、お題が「霊園」といわれてることもあり、この辺りで認識の齟齬が生まれていそうです。
自然葬(散骨)と自宅保管については触れられていないため判らないのですが、必要としていない人の真意をもう少し深掘りしたいところです。認識不足を自認してか「分からない」が多いのも特徴ですね。いきなり振られても、なかなか主体的になれないのが「お墓」……わかります。
実際どんなふうに捉え、答えていたのか、自由記述でみてみましょう。
Q13 都立霊園または墓地全般に関する意見(自由記述)
おはかんり的に気になる声、代弁してくれてる声、なるほどの声を、以下に抜粋してみます。
今回アンケートを通じて感じたこととして、近親者や自身の死後に、葬儀や墓地の対応を始めるようでは、その費用や場所等の選択肢の幅を狭める可能性があるのではないか。都政として計画的に霊園、墓地の場所やあり方を考えていくことも大変重要であると考えるが、それに加えて、それらを自分事ととらえていない人たちに対する啓蒙活動も重要であると考える。
(男性 30代 小平市)
少子化が進み、先祖代々、後継するとの考え方が今後は実行できない。その意味では東京都で取り組もうとしている合葬埋蔵などの施策は大賛成。知らないことばかりだったが大いに参考になった。
(男性 50代 品川区)
家族の形が多様化していく中で、墓地は既に時代遅れなのではないかと感じる。自分には手元供養がいちばんニーズに合っていると思うため、家族や自分は手元供養をする予定。
(女性 30代 三鷹市)
少子化の中で墓守りをどうするかは、多くの方々が直面する課題と思います。これからの時代を担う世代のニーズに応じた様々な形態を考えていく必要があると思います。
(男性 40代 大田区)
人は皆、死に向かって歩いているが、年齢が若ければ若いほどそのことを忘れがちである。親しみの持てる霊園が設立されれば、人々が人生をより良く考えるための拠点になると思う。
(女性 40代 練馬区)
みなさんにとって、このアンケートに答える機会が、お墓について考えるきっかけになっていることが見受けられますね。それだけでも、こういった調査の意義がありますし、とても参考になりました。願わくば、より多くの人に知って欲しいものです。
まとめ
今回は都政モニターの「東京都の霊園」調査から、東京都民のそもそもの墓地の有無、必要性をどう考えているかというデータのみをピックアップしてみました。
各問いに「自分ならどう答える?」と考えてみて気づくのは、有りか無しかの事実を問われるならともかく、どんな形態を選ぶかは、簡単には、自分一人では決められないことです。自分ごとで考えると同時に、家族のことであり、本人と遺された人の両サイドから考えなければ、答えにたどり着けません。
多様な価値観がより多く集まる東京のお墓問題は、日に日に複雑化・細分化しているように感じます。問題はあるけれど、あまり見えてこないのも東京だからかもしれません。
都立霊園の運営や計画に関する質問には触れませんでしたが、その観点から見ていくとまた面白いです。実際に、既存の都立霊園の整備計画がいくつか進行中であることもわかり、今後紹介していきたいと思います。
また、東京都自体が、東京23区、多摩26市3町1村、伊豆諸島・小笠原諸島から成る大所帯のために、都政と各自治体の棲み分けの問題もはらんでいます。この観点では、お隣の横浜市、さいたま市、千葉市、といった市行政の事例などからも深掘りできそうです。



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