【読み解き】「終活はするべきでない」? 気になる記事をわかりやすく

お墓と終活はよく一緒に語られるので、終活関連記事のチェックは欠かせません。とくに最近目にする機会が増えていると思いませんか?

今回は、5月16日にWebサイト「デイリー新潮」に掲載された記事、「仏教思想家が「終活はするべきでない」と指摘する理由 終活ビジネスで財産を奪われるリスクも」を読み解いてみたいと思います。

流行りの「終活」記事の一つを深読みしてみましょう。

こんな記事

Web記事の特性をおさえる

まず、Web記事を読むときにおさえておきたいポイントをチェックします。

タイトル付近に【「週刊新潮」2021年5月6日・13日号掲載】とある通り、週刊誌からWebサイトへの転載記事です。ゴールデンウィーク合併号の特集で、8,000文字超えのボリュームとなっています。

本誌での記事タイトルは末尾にありました。

特集「仏教思想家が金言 『終活』なんておやめなさい」

これがWeb記事のタイトルになると、以下のように変わります。

仏教思想家が「終活はするべきでない」と指摘する理由 終活ビジネスで財産を奪われるリスクも

だいぶ長くなって情報量が増えていますね。読み進めると、1画面では収まらず2ページ構成となってて、上記タイトルの2ブロックがそれぞれ前半(1ページ目)と後半(2ページ目)を表すものとなっていました。

事前にこうした内容のあたりがつけば、前半と後半の興味に応じて、いずれかを読み飛ばすのもありかもしれません。長めの記事の場合、できれば最初に文字数やページ数が分かるとありがたいですよね。

とはいえ無料で読めるのだから、作り手や掲載側の事情は汲んでおきましょう。今回のように週刊誌・紙媒体発信ならば、転載と割り切って読むことです。写真や構成にもし読みづらさがあっても、読む側のストレスは軽減されるはずです。

そんな訳で、前半・後半に分けてみてみます。

前半:仏教思想家が「終活はするべきでない」と指摘する理由

前半部は、昨今の「終活」ブームに警鐘をならすものとして、仏教思想家のひろさちやさんによる4,500字超えの寄稿となっています。

ひろさちや

仏教思想家。1936年大阪府生まれ。東大文学部印度哲学科卒、元気象大学校教授。『どの宗教が役に立つか』『ひろさちやの般若心経88講』『仏教に学ぶ老い方・死に方』『釈迦物語』『こんな長寿に誰がした!』など著書多数。

出典:デイリー新潮

執筆者プロフィールも末尾に行かないと分からないのですが、写真のキャプションに「今年85になる仏教哲学の“伝道師”」とあり、その想定で読むと理解しやすくなります。

前半の要旨は以下のようなものでした。

・相続や葬式は遺族の問題だから、遺族のしたいようにさせるべき。
・葬式と仏教は江戸時代から切ってもきれない関係にあるが「葬式仏教」は考えもの。
・宗教の役割とは人間の「生き方を教える」こと。死者の面倒をみるべきではない。
・私は葬式も墓もどうしてくれても構わない。仏教の「即得往生」で死んだ瞬間に魂はお浄土の世界に行くと信じているから。
・「火土葬」は単なる風習で、死んだ後の処理を気にする必要はない。
・日本人は無宗教ではなく「拝金教」信。
・「終活」=金儲けのビジネスに狙われ、引っかかる老人が多い。
・死後のことは口出し無用、死に方もコントロールできないのだから、未来のことを考えても仕方ない。何事も自分で操ろうとするのは「人間の欲」である。

ひろさちや氏の「死生観」は、どのくらい刺さるでしょうか。後期高齢者に差し掛かる年代向けに書かれているように感じましたので、団塊ジュニア世代からみると親世代への警鐘と捉えられるでしょうか。年代によっても感じ方、捉え方に差が出そうです。

終活や死後の面倒をみるような昨今の「葬式仏教」に疑問を呈し、本来の仏教の教えに立ち戻るべきということに、主眼が置かれているように感じました。死後はもちろんのこと、自身の死に方さえ決められないのだから、「終活せねば」という空気に踊らされたり、ましてや騙されるな、ということですね。

お釈迦様の「死後について一切考えるな」という教えを用いて、「今」を蔑ろに生きることのないように、というメッセージにつなげています。

後半:終活ビジネスで財産を奪われるリスクも

2ページ目は「週刊新潮」編集部による「終活ビジネスで財産を奪われるリスクも」に入っていきます。「『終活』なんておやめなさい」特集と銘打っていることもあり、「終活」に対するネガティブな見出しが並びます。

  • 実例で学ぶ「死後の準備」の落とし穴
  • 「葬儀」「墓」生前契約でトラブル多発
  • 書いてはいけない「エンディングノート」
  • 「生前整理」「断捨離」で“終活ビジネス”に狙われる「あなたの財産」

終活トラブルのバッドケース

独立行政法人・国民生活センターに寄せられる終活に関わる相談では、『墓』、『葬式』、『遺品整理サービス』の順に件数が多いそうで、それぞれトラブルの実例があげられています。

実例「葬儀会社」
父親が互助会に事前に払っていた額(24万円)で葬式代金を賄えると考えていた娘。食事代や白装束代を別途45万円請求された。互助会のパンフと葬儀会社の請求に齟齬があり返金を求めたが拒否された。

実例「お墓」
永代供養の樹木葬を夫婦合わせて44万5千円で契約した70代女性。その後病気が見つかり夫も記憶障害に。子供の家に厄介になる可能性を考えキャンセルを申し出たが返金できないと言われた。

実例「墓じまい」
嫁いだ娘に言わずに墓じまいを考えた70代男性。お寺に300万円のお布施をしたが、あとから聞いた娘と揉めてしまった。娘が取り消しを願い出るもお寺からは返金されず。

上記は、生前契約と金銭にまつわるトラブルで、明らかに安易に契約してしまっていることが原因ですね。いずれも残された家族が関係するもので、家族とコミュニケーションを取らずに進めてしまったことも共通しています。そして精神的な問題にも。

実例「エンディングノート」
エンディングノートを書くことを息子たちに伝えた80代男性、積極的に情報を集められたり進捗を問われるなど、“早く死ねと思われているのではないか”と疑心暗鬼に。

「日本葬祭アカデミー教務研究室」代表で葬祭カウンセラーの二村祐輔氏は、こうした「終活疲れ」に陥らないようにとアドバイスします。エンディングノートは、「自分の希望は2割、残り8割は遺族に任せる心持ちで」あくまでコミュニケーションの手段として捉えることです。

「生前整理」「断捨離」に潜む罠

続いて「終活」の一環としての「生前整理」「断捨離」にありがちな苦情や相談から。

実例「生前整理①」
80代の母親のところに『生前整理アドバイザー』と名乗る買取業者がやって来て、不用品を出すよう求められ、貴金属を安価で買い取られてしまった。納得できない50代女性より。

実例「生前整理②」
骨董業者に切手のコレクションを買い取ってもらったが3千円にしかならずに後悔した80代男性。クーリングオフしようと電話してもつながらなくなってしまった。

実例「生前整理③」
母親の生前整理を手伝おうと業者に依頼した50代女性。作業当日はゆっくり仕分けができず、不用品じゃない自身のものまで回収されてしまったが、結局戻らず。

財産を狙う不届き者もいれば、自ら差し出してしまっているケースもありますね。「終活」だからというよりも、一般的にありがちな高齢者トラブルのようにも思います。

「『終活』という言葉にのっかったビジネスやメディアに煽られ」た実務的な備えや、強迫観念に動かされるのではなく、「自分の死生観を見つめ直してほしい」と結ばれていました。

まとめ:終活ブームに気をつけて

前半と後半のアプローチが異なるために、すこし捉えづらかったかもしれません。じっくり読み解いてみると、それぞれからメッセージや問いを受け取れるのではないでしょうか。

お年寄りはこうも簡単にお金を差し出してしまうのか、と悲しい気持ちにもなってしまいましたが、子世代も絡んでの同情できないケースもありました。知っていれば同じ轍は踏まないと思うので、目を逸らしてもいられません。怖がるのではなく、後悔しないように、賢くなることです。

それにも増して近ごろ感じるのは、メディアによって作られる終活ブームもあるということ。「終活はするべきでない」といったタイトルも然り、煽られてしまったり、漠然と不安を掻き立てられたりしてしまうかもしれません。

まだあやふやな定義の「終活」は、決して二項対立するものではなくて、個々人の考え方であり、生活の一部に当たり前にあることを、取り沙汰しているだけでもあります。誰がどのように括っているのか、背景や文脈を読み解くことは大事だと思います。

個人的にはひろ氏の「持っているお金は使い切っちゃえばいい」「もっと自分のやりたいようにやっていい」といったメッセージに共感しました。ご本人の身体が不自由になったからこその強さもありました。お年寄りが活発で、元気でいるための活動も「終活」に括られたりするので、悩ましいところではありますが。

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